フランスビジネススクール留学メモ

フランスはグルノーブルのビジネススクール(Grenoble Ecole de Management)に通ってます。専攻はファイナンス(Master of Finance)。経験したことや思ったことなどゆるく書き留めます^^

卒論について思い出したこと

 

前回は卒業論文について触れましたが、それを少し掘り下げようかと...

 

というのも、ビジネススクール出願にあたって、自分の今までの経験や知識、人間性を最大限アピールすることが強く求められました。

「今までの」とは言っても、私は実務経験がまだないのでネタは限られていましたが、それでも能動的に何らかの体験をし、考え方の変化など反応があれば、それは自分の人生を特徴付ける要素になるようです。そのような意味で、自分が、(自分の話を聞いてくれる)他人に特に伝えたかったことの一つが、卒業論文の執筆経験でした。

 

少し振り返ると、私が所属していたゼミは管理会計学が学習対象でしたが、(指導教官の方針で)卒論のテーマは特に限定されませんでした。学生が個々の興味に導かれて研究していたため、マーケティングや経営組織論のテーマについて執筆している学生もありました。私は管理会計の扱う内容(特に財務分析など財務情報をもとに企業の問題や課題を考えること)が好きで、その周辺テーマを探していた一方で(逆に言えば頭が固く)、自分が知っている範囲の管理会計学が前提とする分析方法よりも、より定量/数学的なアプローチを用いた研究を志向してもいました。数学や自然科学も好きで、所謂モデルとか理論の構築に憧れていた訳なんですがただ経営学的には、企業の内部/外部環境や戦略に常態はないとする見方が一般的らしいので(というかそう習いましたし)、企業内部の事象をモデル化というのも変な話なんですよね…~~>(とは言いつつ、モチベーション理論やエージェンシー理論、コーポレートファイナンスとかって、ゴリゴリ数学使わなくても事象が定式化されていたり、簡単な論理関係に落とし込まれている場合もあったはずなのでよく分からんのです)

 

逸脱しましたが、企業内部のマネジメントについて定量的アプローチで課題提案してみよっていう方向性が行き着いたテーマは、コーポレートガバナンスでした。このテーマを初めから志向していたわけではなかったんですが、とりあえずマネジメントのことなら英文文献かなというバイアスがかかり(院留学も決意していたし)、それっぽいジャーナルを大学図書館でパラパラとめくり、これは理解できる/あれは理解できないと選別しつつ、なおかつ含まれる数学がある程度理解可能で、9ヶ月での完成を現実的に思えるものが、それであっただけです無論、ジャーナルに掲載の論文は私のなんかと比較できませんが、テーマと方法論を極めて簡易的に踏襲することは可能と思われました。経緯はそんなもんでした…--> (当然、文献を読む中でReading能力が向上したことは論を待ちません。スタンダードなEnglishが使われている印象でTOEFLの読解に適するかと。)

 

ガバナンスを非常に粗く狭く定義すると、経営陣が株主利益や企業価値の最大化に即した経営をすることが可能となるメカニズム、と言えると思います。つまりは、「メカニズム ⇨ (経営陣の働き) ⇨ 利益や企業価値の向上」という因果関係を重回帰分析で解明することを目的としました。あまり話しすぎると無知を晒してしまうので避けたいですが(汗)そもそもガバナンスって「経営陣 vs 株主」構造が前提になっているかと思いますが、かつてのメーンバンク制の存在や買収戦略が比較的一般的でなかった歴史を持つ日本的経営において、この(単純な)関係が強く想定されてきたとは思えません。一方、海外(特に米国)企業を対象にした文献では様々なメカニズムとその効果についてそれなりに長期間の議論がありました。なので、この単純な「経営陣 vs 株主」関係を前提としたメカニズムが、近年の(変わりつつある、というか欧米よりになりつつある)日本の経営事情にとってどれほど効果的(に見える)かを考えることは、日本企業がこれから取るべきガバナンス戦略について何らかの示唆を与えられるのではと、思っていました。研究計画が決まればあとはほとんど作業なんですが、代表的な日本企業200社程度のコーポレートガバナンスと財務に関するデータを蓄積したことは、ハードでしたが良い経験になりました(通常はデータベースを購入すると思うんですが笑)。また、ビジネススクール出願準備も9月頃から忙しくなってきたので、良いタイミングで作業に移行できたとも思います。

 

結果的には、内部環境の問題を定量的に解決したところで実態にそぐわないという本質的な指摘は最もですが、何より統計的手法の正確さに問題があったと思います(研究レベルで統計を使ってる先生方にもっと教えを請うていれば)。

何れにしても、対象がそれに適するか否かはひとまず置いといて、物事を言葉よりも数字や単純な論理関係で理解したい、というのは私の基本的な欲求みたいです笑。ファイナンスを専攻したのもそういう意味があります。 受入先機関も決まり、卒業年次も終わりを迎える1月頃、指導教官が「研究も、最終的には何を信じるかだ」と仰ったのを思い出します。経験することを通して、自分の信じるものを形作っていく必要があるようです。